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マーケター採用は本当に難しいのか|数字の出所を確かめる

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1本の道が3方向へ枝分かれしている図。採用・外注・顧問の三択を表している

マーケターの求人が埋まらない。給与を上げるか要件を下げるかの話に、毎回なっていませんか。

求人倍率が高いから採れない。そう説明されると納得しがちですが、その倍率の出どころを辿ると、国の統計ではありませんでした。

採用が難しいこと自体は事実です。ただし理由は市場の需給ではなく、社内で何を任せたいかが決まっていないことにあります。任せたいことが決まると、採用しかない仕事は思ったより狭くなります。

外部のマーケティング責任者として企業を支援し、その前は事業会社で自分でマーケターを採用していました。両方の立場から、採用・外注・顧問のどれを選ぶかを解説します。

この記事でわかること

  • 「マーケター採用が難しい」の根拠は、確認できた範囲では公的統計に見当たらず、民間の自主調査と転職サービス1社の集計に行き着く
  • 従業員100名以上の企業でも約6割が人材不足と答えている。人数がいることと、足りていることは別
  • 採用でしか埋まらないのは、中堅が抜けて次のリーダーがいなくなった穴。それ以外の多くは外部でも動く

この記事はインハウスのご支援の一部です。

目次
  1. 「採用が難しい」の根拠は、2種類の数字に行き着く
  2. 読めた3本のうち、数字の出所に触れた記事は無かった
  3. ハローワークの職業別の一覧に、マーケティング職の区分が見当たらない
  4. よく引かれる倍率は、転職サービス1社の登録者から出ている
  5. 数字が悪いのではなく、母集団が違う
  6. 大企業でも、6割が足りていない
  7. 300名に聞いた調査では、100名以上の企業でも約6割が不足と答えている
  8. 人数がいることと、足りていることは別
  9. 規模で決まるという裏づけは、取れなかった
  10. 社内の人が言うと、通らない話がある
  11. 外部を使わない理由は、お金だけではない
  12. 1位は予算。ただし、同率2位にセキュリティが並ぶ
  13. アクセス権を渡せるかどうかが、実際の分かれ目になる
  14. 外部といっても、頼み方は3つに分かれる
  15. 調査に出てこない理由もある
  16. 採らないと無理なのは、中堅が抜けたとき
  17. 面接した実感では、任せられる人は10人に1人いるかどうか
  18. 採用の重さは、入り口ではなく出口にある
  19. 中堅が抜けた穴だけは、外から埋められない
  20. 外部に頼んでも、権限と予算がなければ動かない
  21. 整理と事例は効く。止まるのは実装に入ってから
  22. 金額を下げると、その金額のスピードになる
  23. 同じ「顧問」でも、買っている範囲が3段階に分かれる
  24. 受け取る側に、号令をかけられる人がいるか
  25. この見方が当てはまらない場面もある
  26. よくいただく質問
  27. まとめ:倍率の前に、採る理由を1行で書いてみてください
  28. 参考にした資料

「採用が難しい」の根拠は、2種類の数字に行き着く

「マーケター 採用 できない」で検索して、上位5本を開きました。うち1本は本文を取得できず、もう1本は採用する側ではなく転職する側に向けた記事でした。残る3本が、採用する側に向けて書かれたものです。

その3本が挙げている理由は、よく似ています。

たとえば中小企業向けに書かれた1本(root-scope.com・2026-08-28参照)は、5つの理由を挙げていました。採用市場での取り合い、1人体制のポジションが敬遠されること、地方は母集団が薄いこと、給与水準、そして何をやらせるかが定義できていないことです。

どれも実務の感覚と大きくは離れていません。ただ、その理由を支えている数字まで辿ると、行き着く先は2つでした。

読めた3本のうち、数字の出所に触れた記事は無かった

採用する側に向けて書かれた3本を、書かれている論点で数え直しました。

論点3本のうち
採用が難しい理由を並べている3本
採用以外の選択肢(外注・業務委託・フリーランス)に触れている3本
採用にこだわるべきかの判断軸を書いている1本
難しいという前提の根拠になっている数字に触れている0本

代替案の話が出てこないわけではありません。3本とも、外注や業務委託まで書いています。

抜けていたのは、その手前でした。難しいという前提そのものが、どの数字に支えられているのか。その根拠に触れた記事が1本も無かったので、この記事はそこから始めます。

ハローワークの職業別の一覧に、マーケティング職の区分が見当たらない

1つ目は、有効求人倍率です。

職業別の有効求人倍率をまとめて紹介しているページを確認しましたが、掲載されている職業の区分にマーケティング職に相当するものは見当たりませんでした(ハローワーク情報サイト「ハロワのいろは」・2026-07-31 更新)。並んでいるのは、事務、販売、専門的・技術的職業といった大きなくくりです。

マーケティングという職種で切り出した数字は、確認できた範囲では出てきませんでした。

よく引かれる倍率は、転職サービス1社の登録者から出ている

2つ目は、転職求人倍率です。

企画・マーケティング系の求人倍率という数字は、パーソルキャリア株式会社が運営するdodaが公開しています(2026-07-06 公開)。同社のサービスに登録している転職希望者と、同社が預かっている求人から算出したものです。

つまり、1社が自社の登録者と求人から出した数字です。国が全体を数えたものとは、母集団の作り方が違います。

数字が悪いのではなく、母集団が違う

誤解のないように書いておくと、これは人材会社や広告代理店を責める話ではありません。

公的な統計が拾っていない領域だからこそ、事業者が自分たちの手元のデータを公開してくれています。むしろ、これが無かったら何も分からないままでした。

もっとも、使うときには性質を知っておいたほうが安全です。dodaに登録している人と、転職市場の全体は違います。そして転職市場の全体と、いま自社が採りたい1人は、さらに違います。

倍率が高いから採れない。この順番で考え始めると、自社の条件を見直す機会がそこで消えます。求人票の書き方も、任せる範囲の切り方も、まだ触っていないのに市場のせいで片づいてしまいます。

代わりに見るのは、自社の手元にある数字です。求人を出してから何人が応募したか、そのうち何人と会えたか、会った人のどこで判断が止まったか。この3つは自社の採用管理の画面にすべて残っています。

外の倍率は動かせません。手元の3つの数字は、条件と要件を変えれば動きます。

この章のまとめ

「採用が難しい」の根拠として流通しているのは、転職サービス1社の集計と、民間企業の自主調査の2つ。職業別の有効求人倍率を紹介するページを確認した範囲では、マーケティング職の区分は見当たらなかった。数字が間違っているのではなく、母集団が「いま自社が採りたい1人」とは違う。

「採用が難しい」の根拠になっている数字の出どころを2系統に整理した図
「採用が難しい」の根拠になっている数字の出どころを2系統に整理した図

大企業でも、6割が足りていない

もう1つ、前提にされやすいものがあります。大きい会社には人がいる、という感覚です。

300名に聞いた調査では、100名以上の企業でも約6割が不足と答えている

株式会社LiKGが、マーケティング部門に所属する正社員と経営者300名にオンラインで聞いた調査があります(2025年9月実施)。300人のうち210人がマーケティング人材は不足していると答え、従業員100名以上の企業に限っても、約6割が不足を実感していました。

300名に聞いた調査なので、業界全体の実数ではありません。それでも、傾向としては読めます。

人数がいることと、足りていることは別

この調査から読めることは、1つです。

社内にマーケティングの担当がいる会社でも、足りていないと感じている割合は高いという点です。人数の話と、手が回っているかの話は、別々に動きます。

採用のご相談をいただくとき、最初に確かめるのがこの区別です。人がいないのか、人はいるけれど任せられる範囲が足りないのか。前者なら採用、後者なら外部でも埋まるはずです。

区別のしかたは、3つ聞けば足ります。いま止まっている仕事は何か。それは手が足りないのか、判断ができないのか。判断ができないとして、社内の誰なら決められるのか。

手が足りないだけなら、外注でもフリーランスでも埋まります。判断ができず、しかも社内に決められる人が見当たらないときに、はじめて採用が候補に上がります。

規模で決まるという裏づけは、取れなかった

企業規模別に外部人材の活用状況を比べたデータを探しましたが、見つかりませんでした。ですので、規模で決まるとは書きません。

そのうえで、観察として書けることがあります。

上場企業になるほど社内に人が多く、外の会社にCMOやディレクタークラスを渡すことは少なくなります。役員や本部長のところで組織ができているためです。統計ではなく、支援する側と在籍する側の両方で見てきた範囲の話です。

社内の人が言うと、通らない話がある

規模よりも実際に効いていたのは、プロジェクトの段階のほうでした。

まだ開発段階の事業で、社内のマーケティング担当に相談できないレベルの内容だったとき。あるいは、社内の誰が言っても「なんであの人が言ったの」で終わってしまうとき。どちらの場面でも、外の人の意見が要ります。

同じ内容でも、誰が言うかで通り方が違う。社内を通すための裏づけになる相手に意見をもらうために、プロジェクト単位でマーケティングの責任者を外から入れる、という使い方です。

このとき外の人に払っているのは、意見の中身だけではありません。その意見が社内で通ることまで含めて頼んでいる形になります。

ですので、社内にマーケターが何人いるかは、外部を入れるかどうかの答えになりません。実際に見ているのは、その案件で誰の言葉なら前に進むのか、のほうでした。

会社の規模ではなく、その案件で何が足りないかで決まります。実際の入り方は外部CMOとして入った事例にまとめてあるので、体制のイメージを掴みたいときに読んでみてください。

外部を使わない理由は、お金だけではない

同じ調査に、外部人材を活用していない企業が挙げた理由が載っていました。その理由の並びが、いちばん腑に落ちました。

外部人材を活用していない理由割合
予算がないため45.3%
人員が足りており必要性がない28.1%
セキュリティ面での不安28.1%

(株式会社LiKG・2025年9月実施・回答者300名のオンラインアンケート)

1位は予算。ただし、同率2位にセキュリティが並ぶ

予算が1位なのは想像がつきます。目を引いたのは3行目でした。

外部を使わない理由として、セキュリティ面の不安が、人員の充足と同じ割合で並んでいます。お金の問題として語られがちな話に、別の軸が混ざっていました。

アクセス権を渡せるかどうかが、実際の分かれ目になる

セキュリティ面の不安は、実務の感覚とよく一致します。社内にはワークフローがあり、稟議申請のツールにアクセス権を付与すること自体が簡単ではありません。情報が外に出るリスクも、そこに乗ってきます。

業務委託で社内に常駐してもらう形にすれば、いくらかは解けます。それでも、決裁のワークフローに外部の人を入れる部分は残ります。

止まりやすいのは、次の4つです。

  • 広告の管理画面や解析ツールの権限を、社外のアカウントに渡してよいか
  • 稟議や承認のワークフローに、社外のユーザーを登録できるか
  • 顧客のデータや売上のデータを、どこまで見せられるか
  • 社内のチャットに入ってもらうのか、外部とのやり取りだけに留めるのか

このうち1つでも渡せないなら、その業務は社内に残ります。逆に全部渡せる会社であれば、外注できる幅はかなり広くなります。

外注できるかどうかは、金額より先に、渡せる権限で決まる場面があります。

外部といっても、頼み方は3つに分かれる

外に出すという言い方でまとめられがちですが、実際の形は分かれています。

頼み方向いているところ引き受けることになるもの
広告代理店・支援会社チームで入るため、窓口が一本化される手数料が乗る
フリーランス単価を抑えやすく、実務者と直接やり取りできる稼働に上限があり、得意分野が人に紐づく
業務委託での常駐社内に近い動き方ができる決裁の権限までは渡らない

正解が1つあるわけではありません。渡したい範囲と、渡せる権限の組み合わせで決まります。

調査に出てこない理由もある

一方で、調査の選択肢には入っていないけれど、実務でよく聞く理由があります。頼み先を知らないことです。

外に頼みたい気持ちはあるのに、頼める相手が見つからない。付き合いのある会社もなく、誰に聞けばいいのかという段階で止まっている会社は、少なくありません。

もう1つが、予算規模の小ささです。月に動かせる金額が数十万円の段階だと、外注に回した分だけ手数料が引かれ、実際に動く量が目減りします。それなら社内でやったほうが早い、という判断に傾きます。

この段階では、実働を外に出すより、判断だけを外から借りるほうが手元に残ります。金額が増えてきてから実働の外注に切り替えても、間に合います。

頼み先が見つからないことと、予算の小ささ。この2つは調査の選択肢には出てきません。ただ、ご相談の入り口としては、予算やセキュリティと同じくらいよく出てきます。金額の内訳から考えたいときは、内製と外注のコスト比較CMO代行の費用相場と内訳を並べて読むと、判断材料が揃います。

この章のまとめ

外部を使わない理由の1位は予算。ただし同率2位にセキュリティ面の不安が並ぶ。決裁ワークフローへのアクセス権を渡せるかが、金額より先に効く場面がある。調査の選択肢には出てこないが、実務では「頼み先を知らない」で止まっている会社が多い。

採らないと無理なのは、中堅が抜けたとき

ここからは、自分が事業会社でマーケターを採用していたときの話になります。

面接した実感では、任せられる人は10人に1人いるかどうか

実装まで任せられる人は、本当に稀でした。

自分で面接してきた範囲では、10人に1人いるかいないか。募集条件を思い切り良くしても、20〜30人に1人という感覚です。この人は超優秀だと思える相手には、そう多く出会えません。

見ている層面接してきた実感
実装まで任せられる人10人に1人いるかどうか
超優秀だと思える人(募集条件を大きく良くした場合)20〜30人に1人

さらに、レイヤーが上がるほど条件が合わなくなります。持っている年収が高い、専任ではなく自分でも会社をやっている、といった理由です。ジュニアからミドルクラスのマーケターであれば、ここまでの難しさはありません。

だから、幹部候補を育てるくらいの気持ちで臨まないと、上のレイヤーの採用は成立しにくくなります。

つまり、難しさの中身は応募が来ないことではありませんでした。会って、話して、任せられるかを見た結果として残る人が少ない。詰まっているのは、会ったあとの見極めのほうです。

母集団を増やす打ち手と、歩留まりを上げる打ち手は別物です。倍率の話は前者にしか効きません。

採用の重さは、入り口ではなく出口にある

採用のリスクは、採れないことよりも、採ったあとにあります。

合わなかったとき、社員を簡単に外すことはできません。外注であれば、契約の区切りで止められます。下手に採用するより、外で経験を積んでいる人に一時的にコストを払うほうが、リスクは小さくなる場面があります。

金額を比べているのではなく、外し方を比べています。

中堅が抜けた穴だけは、外から埋められない

では、採用しかない場面はどこか。2つあります。

1つは、社員でないと判断できない仕事が社内にあるときです。外注では判断できない内容、渡せないアクセス権、漏洩に関わる範囲がここに入ります。

もう少し具体的に書くと、他部門と利害がぶつかったときにどちらを取るかを決める場面。あるいは、過去の経緯を知らないと判断を誤る場面です。この2つは、資料を渡しても外の人には持ちきれません。会社のなかで積み上がってきたものが判断材料になるためです。

そして何よりも採らないと無理だと感じたのは、中堅がいなくなったときでした。リーダー候補が転職してしまい、次のリーダーがいない。若手はまだ育っていない。この形になったら、採って教育して育てるほかにありません。

外部の人は、判断材料と経験を持ち込めます。ただ、社内の次のリーダーを育てる役までは担えません。

埋めたい穴採用外部
次のリーダーがいない(中堅の離脱)◎ 採って育てる× 代わりにならない
社員でないと判断できない仕事△ 常駐でも権限は残る
施策の設計と優先順位づけ
実行の手が足りない
代理店の管理・レポートの読み解き

この表で×が付いている行が1つでも当てはまるなら、採用を続ける理由があります。逆に、下の3行だけが埋めたい穴であれば、採用しなくても回る可能性は高くなります。

任せたい仕事を書き出すときは、1行ずつ「これは社内の人でないとできないか」を確かめてみてください。判断が要るのか、手が要るのか。この2つを分けるだけでも、採用しかない行はかなり減ります。

残った行が2つか3つなら、その分だけを社内で持ち、残りを外に出す形が組めます。マーケターを1人採る前に、この仕分けを先に済ませておくと、求人票の要件も短くなります。

社内で育てる前提に切り替えるなら、マーケティングの内製化支援内製化の進め方に、育てる順番を書いています。

採用でしか埋まらない穴と、外部でも埋まる穴を並べた図
採用でしか埋まらない穴と、外部でも埋まる穴を並べた図

外部に頼んでも、権限と予算がなければ動かない

外部を勧める話ばかり書いてきたので、うまくいかなかった側も書きます。事業会社にいたころ、顧問に入ってもらったときの学びです。

整理と事例は効く。止まるのは実装に入ってから

課題を整理してもらい、他社の事例を教えてもらったとき、頭のなかがすっきりして安心感が出ました。整理してもらう時間は、本当に効きました。

効いたのは、やることが増えたからではありません。やらなくてよいことが決まったからでした。社内だけで話していると、どの案にも一理あるように見えて、優先順位が付かなくなります。

外から見た人が「これは後で構いません」と言い切ってくれると、そこで手が空きます。

止まったのは、実装に入ってからです。

理論の設計とプレゼンテーションは的確でした。ただ、それを実行に移す段になると、社内にいる人の協力がなければ進みません。権限を渡すこと、予算を割くこと。この2つが伴わないと、整理された資料だけが手元に残ります。

金額を下げると、その金額のスピードになる

安く雇うと、その金額に合ったスピードにしかなりません。

外の会社の人なので、当然といえば当然です。実務まで頼むのなら、それなりの予算を預ける必要がある。自分が発注する側で学んだところです。

安く抑えた分は、遅さになって返ってきます。半年かけて動かないより、3か月で終わらせて次に進むほうが、結果として安く済む場面もあります。

だから、任せる範囲を先に定めることが効きます。助言までなのか、実行の管理までなのか、実働までなのか。

同じ「顧問」でも、買っている範囲が3段階に分かれる

自社では、この3つを分けて定義しています。

  • 助言まで(アドバイザー):月1〜2回のミーティングとチャットでの相談、資料やファイルの添削
  • 実行の管理まで(コンサルティング):戦略の策定に必要な調査と提案、各部署の調整、代理店の管理
  • 実働まで:ご希望の範囲に応じて、個別に見積もる

月額だけを並べても、この段が違えば比較になりません。聞くべきなのは金額ではなく、どこまでやってもらえるかのほうです。段ごとの費用の見方は、マーケティング顧問の費用の見方にまとめました。

受け取る側に、号令をかけられる人がいるか

もう1つ、発注する側で決まる部分があります。

外部が渡せるのは、判断に必要な情報と、経験者ならどうするかという意思の2つです。最終判断と号令は発注側に残ります。 ですので、受け取る人にディレクター以上の権限がないと、情報が渡っても動きません。

権限を渡すというのは、役職を用意する話ではありません。他部門に依頼を出せること、優先順位を変えられること、予算の使い先を決められること。この3つのうち、どれを外部の判断に従って動かすのかを決めておく、という意味です。

逆に、これまで一人で判断してきた人には効きます。判断材料と、経験者の意思が同時に入るためです。

実例を1つ。発注側にいたとき、広告から来た人が受注になったかを追うために、営業に成約の情報を書いてもらう流れを作りました。いま社内にあるデータを人が突き合わせるだけで、どの経路がずれているかは見えます。

ただ、これは営業の工数を使う依頼でした。外部の立場だけで通せるものではありません。社内で号令をかけられる人がいたから動きました。

伴走の形で外部を入れる場合の範囲はマーケティング支援に、数字を追う体制の作り方は広告効果測定の支援にまとめています。

この章のまとめ

外部が効くのは課題の整理と事例の提供まで。実装は社内の協力がないと進まない。「顧問」は助言まで・実行の管理まで・実働までの3段階。金額の前に範囲を揃える。受け取る側にディレクター以上の権限がないと、情報が渡っても動かない。

この見方が当てはまらない場面もある

ここまでの整理は、レイヤーの高いマーケターを1人採るかどうかで迷っている会社を想定して書いてきました。次の場面では、別の答えになります。

ジュニアからミドルクラスを採るとき。 市場で見つかります。応募の母集団も、任せられるかどうかの見極めも、上のレイヤーほど厳しくはなりません。

運営フェーズに入っていて、作業量が読めるとき。 毎月やることが決まっているなら、外注のほうが素直です。採用の代わりに外注を使う会社は、運営フェーズで多く見かけます。

すでに社内にマーケティング担当がいるとき。 外に頼むより社内でやろう、という判断になりやすくなります。経験の浅いチームほど、マーケティングは社内でやるものだという前提を持ちがちです。それ自体が悪いわけではありません。

機密の扱いが厳しい業種のとき。 そもそもアクセス権を渡せないのであれば、採用のほうが早い結論になります。

予算が小さいとき。 外注に回すと手数料の分だけ実働が減ります。この場合は、外部を使うにしても助言の段までに絞るほうが、手元に残ります。

外部に頼んだ経験がまったくないとき。 最初から実働をまとめて外に出すと、指示の出し方が分からないまま進みます。小さい範囲を1つだけ切り出して渡し、やり取りの回数と手応えを確かめてから広げるほうが安全です。

よくいただく質問

Q. 公的な統計で確かめられないなら、採用が難しいという話は嘘なのですか。

嘘ではありません。難しさは実在しています。

書いたのは、根拠として引かれている数字の性質のほうです。倍率の高さを理由にすると、自社の条件を見直す機会が消えます。出所を確かめておくと、市場ではなく自分の求人票に目が向きます。

Q. 採用と外注では、どちらが安く済みますか。

金額だけでは決まりません。

見ているのは、外したいときに外せるかと、社内に何が残るかの2つです。金額の内訳は内製と外注のコスト比較に分けて書いています。

Q. 外部に頼みたいのですが、頼み先が見つかりません。

まず、任せたい範囲を1行で書いてみてください。

助言までなのか、実行の管理までなのか、実働までなのか。範囲が決まると、探す相手の職種が変わります。決まらないまま探すと、届いた提案を並べても比較ができません。

Q. 顧問を入れましたが、資料が増えただけで終わりました。

受け取る側に、指示を出せる人がいたかを見てください。

権限のある人が受け取っていない場合、情報が渡っても動きません。次に頼むときは、社内の受け手を先に決めてから範囲を決めると、資料で終わらずに実行まで進みます。

Q. 中堅が抜けました。すぐには採れません。

採用は続けたまま、その期間だけ外部で持たせる形になります。

外部は次のリーダーを育てられませんが、判断が止まる期間は短くできます。育成の設計まで一緒に置いておくと、採ったあとの立ち上がりが早くなります。

Q. 求人票を出しながら、外部にも声をかけて構いませんか。

問題ありません。むしろ、その順番のほうが決めやすくなります。

外部の候補と話すと、任せたい範囲が言葉になります。その言葉は、そのままマーケターの求人票の要件として使えます。

Q. 採用がうまくいかない原因は、給与だと言われました。

給与だけが原因のこともあります。ただ、確かめる順番としては後ろのほうです。

先に見るのは、会えた人がどこで止まっているかです。書類の段階で落ちているのか、話したうえで条件が合わないのか。後者であれば、給与の話になります。

Q. 中小企業でも、同じ考え方でよいですか。

企業規模別に外部人材の活用状況を比べたデータは見つけられなかったため、規模で分ける書き方はしていません。

見ているのは規模ではなく、その案件の段階と、渡せる権限の有無です。段階と権限は、大企業でも中小企業でも同じ形で確かめられます。

まとめ:倍率の前に、採る理由を1行で書いてみてください

マーケターが採れないのは、市場に人がいないからとは限りません。倍率として流通している数字は、転職サービス1社の登録者から出たものでした。

採用しかない場面は、はっきりしています。社員でないと判断できない仕事があるときと、中堅が抜けて次のリーダーがいないとき。この2つです。それ以外の多くは、外部でも動きます。

今日できることを1つ挙げます。いま出そうとしている求人票を開いて、「この人に社内で何を残してほしいか」を1行で書いてみてください。 書けたなら採用、書けずに作業の一覧しか出てこないなら、外部でも埋まる可能性があります。

5分あれば終わります。倍率を調べるより先に、この1行のほうが効きます。

そのうえで外部を検討するなら、聞く順番は金額ではありません。どこまでやってもらえるのかを先に揃えて、社内で号令をかける人を決める。この2つが決まっていれば、預けた予算はスピードとして返ってきます。

参考にした資料

※LiKGの調査は、マーケティング部門に所属する正社員・経営者300名へのオンラインアンケート(freeasy)です。官公庁の統計ではなく、1社が実施した自主調査として引用しています。 ※ハローワーク情報サイトは、厚生労働省の一般職業紹介状況をもとに職業別の数値を紹介している民間のサイトです。厚生労働省の原典は確認できていないため、公的な統計に存在しないという断定はしていません。

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この記事を書いた人

たけまるマーケティングディレクター

事業会社で17年、マーケティングの現場と決裁の場にいました。広告・コンテンツ・データのどれか一つではなく、売り方全体を決める側から見た話を書きます。