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広告運用のインハウス化、手数料が浮いても残る4つの問題

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手数料の計算に入るものと、その外に残る4つを、破線で分けて示した図

広告運用を自社に戻したい。予算を増やすたびに手数料も増えるのに、レポートを見ても何をしてくれているのかが読み取れない。そう考えて、インハウス化を検討していませんか。

手数料が浮く金額だけでは決められません。そこに出てこない問題が、4つ残るからです。

この記事では、その4つと、切り替えた日に何が止まるかを書きます。

この記事でわかること

  • 代理店の手数料率では判断できない。率は広告費にかかる数字で、返ってきた成果とは別のもの
  • 広告運用を切り替えた日に、支払いと計測が止まる。媒体の公式ヘルプに書かれている
  • 手数料が浮いても4つの問題が残る。緊急時の連絡先、競合の動き、現場の声、設定ミスを止める人

この記事は運用型広告の一部です。

目次
  1. 広告運用のインハウス化を考える理由は、2つに分かれる
  2. 自社で運用できる環境は、この数年で整った
  3. この1年で、さらに手が届くようになった
  4. 広告運用のインハウス化の判断が、手数料だけになりやすい
  5. 代理店の手数料率は、広告運用の成果と結びついていない
  6. 手数料率をかけて出した金額は、実際の契約と合わないことがある
  7. 広告運用にいま実際いくら払っているかは、内訳を出してもらうまで分からない
  8. 広告運用を切り替えた日に、止まるものがある
  9. 手数料が浮いても、広告運用には4つの問題が残る
  10. 1つ目。困ったときに聞ける相手が、いなくなる
  11. 2つ目。自社の数字が良いのか悪いのか、判断しにくくなる
  12. 3つ目。数字になる前の話が、入ってこなくなる
  13. 4つ目。設定ミスを止める人が、いなくなる
  14. 「AIがあるから広告運用できる」は、半分しか合っていない
  15. 経験者がいないと、出てくるものが一般論になる
  16. インハウス化の記事が書く「人材の確保」とは、別の話
  17. インハウス化を言い出したのは、誰か
  18. 広告運用を、全部いちどに移さない
  19. よくある質問
  20. 参考にした資料

広告運用のインハウス化を考える理由は、2つに分かれる

ひとつは、お金です。代理店に払う手数料を抑えたい。予算を増やすたびに手数料も増える契約なら、なおさら気になります。

もうひとつは、ノウハウです。運用を外に出していると、うまくいった理由も、失敗した理由も社内に残りません。人が変わるたびに、また外から説明を受けることになります。

この2つは、どちらも正しい動機です。

自社で運用できる環境は、この数年で整った

以前は専門の担当者がいないと、広告の運用そのものが難しいものでした。管理画面が複雑で、入札も手作業だったからです。

いまは違います。各媒体の管理画面が使いやすくなり、入札や配信の調整も自動化が進みました。社内に運用の経験者がいなくても、配信を回すこと自体はできます。

この1年で、さらに手が届くようになった

そこにAIが加わりました。数字の集計も、改善案の洗い出しも、聞けば返ってきます。私自身、日々の業務で使っています。

やれる範囲が広がったのは、間違いありません。

だから「自社でやってみよう」と社内で声が上がるのは自然なことです。問題はその先、何を見て決めるかにあります。

広告運用のインハウス化の判断が、手数料だけになりやすい

検討が始まると、話は金額に向かいます。

手数料は毎月出ていくので、痛みが見えます。広告費に率を掛ければ数字も出せます。社内で説明するときも、掛け算で出した金額がいちばん通しやすい。

広告運用のインハウス化を扱った記事を上位から順に読みましたが、骨格はどれもよく似ていました。定義があって、メリットとデメリットが並び、始めるタイミングの目安があって、成功のポイントで締まる。メリットの筆頭には、ほぼ必ず手数料の削減が置かれています。

書かれていることが間違っているわけではありません。ただ、これだけでは決められません。

理由は2つあります。手数料率が成果と結びついていないこと。そして、金額に出てこない問題が残ることです。

代理店の手数料率は、広告運用の成果と結びついていない

「手数料が高い」と感じるとき、実際に気になっているのは2つあります。

手数料率が何%なら妥当なのか。そして、その率に見合う働きをしてもらえているのか。

率が妥当かどうかだけを見ても、答えは出ません。手数料率は広告費にかかる数字で、返ってきた成果とは別のものだからです。同じ20%でも、成果が2倍なら安く、半分なら高い。率そのものには、良し悪しの答えがありません。

手数料率をかけて出した金額は、実際の契約と合わないことがある

契約の形が一つではないからです。

私が見てきた範囲では、広告費の規模に応じて手数料率が下がる契約もあれば、金額が固定されている契約もありました。同じ「手数料」という言葉でも、中身の設計が違います。

だから「手数料率×広告費」で出した金額を人件費と比べても、前提が自社の契約と合っていないことがあります。

なお、この記事では手数料率の相場を書きません。調べても出所のある数字が見つからなかったからです。相場をまとめた記事はいくつもありますが、その率がどの調査から来たものかを辿ると、発行元も時点も分からなくなります。

代わりに書けるのは、確かめ方です。いま実際いくら払っているかは、内訳を出してもらうまで分かりません。

広告運用にいま実際いくら払っているかは、内訳を出してもらうまで分からない

内訳を出してもらってください。

意外かもしれませんが、ここで止まることがあります。見積もりに管理費が別記載されておらず、分けて出すよう依頼しても出てこない。実際にあった相談です。

内訳を求めるのは、値切るためではありません。比べられる形にするためです。

いま払っている金額のうち、どこまでが運用の対価で、どこからが実費なのか。制作物は代理店の社内で作っているのか、外に出しているのか。この2つが分かって初めて、自社に移したときに何が減って何が増えるのかを並べられます。

内訳が出てこない場合、それも判断材料です。説明されないものは比べられません。比べられないものを、削減額で判断することはできません。

この章のまとめ

  • 手数料率は広告費にかかる数字で、返ってきた成果とは別のもの
  • 契約の形は一つではない。広告費の規模で率が下がるものと、金額が固定のものがある
  • まず内訳を出してもらう。出てこないなら、それも判断材料になる

広告運用を切り替えた日に、止まるものがある

代理店から自社に広告アカウントを移す作業は、実務としては「管理アカウントとのつながりを外す」ことになります。

Google 広告の公式ヘルプに、そのときに何が起きるかが書かれています。2026年8月時点の記述では、次のとおりです。

何がどうなるか
支払い毎月請求の設定で支払い元が代理店の管理アカウントになっている場合、リンクを解除するとそのアカウントからの広告掲載が停止する。解除の前に支払い情報の変更が必要
共有のリスト共有タグに依存するリマーケティングリストのデータが追加されなくなり、管理アカウントの共有リストを使えなくなる。ターゲット設定中の広告グループの掲載が停止する可能性がある
コンバージョンの計測複数のアカウントをまたぐ計測タグは、解除後に発生したクリックについて計測されなくなる
過去のデータアカウントの履歴は失われない

過去の実績は消えません。ただし、支払い・共有のリスト・計測の3つは切り替えの日に起きます。とくに支払いは、社内の稟議や口座の準備と噛み合っていないと、そのまま配信が止まります。

ここに書いたのはGoogle 広告についてです。他の媒体は公式の説明を確認できていないので、それぞれのヘルプを見てください。

この章のまとめ

  • 切り替えは「アカウントを渡してもらう」だけでは終わらない
  • 支払い元が代理店側のままだと、リンクを外した時点で掲載が止まる
  • 共有のリストと、複数アカウントをまたぐ計測も切れる。過去の履歴は残る

手数料が浮いても、広告運用には4つの問題が残る

手数料が浮いた金額と、社内の人件費。この2つを並べると比較ができたように見えます。ただ、ここに出てこないものが4つあります。

1つ目。困ったときに聞ける相手が、いなくなる

配信が止まった。数字が急に動いた。媒体の仕様が変わったのだろうか。

そのときに状況を聞ける相手がいるかどうかです。夜間や休日をまたぐこともあります。手数料には、この待機の分が含まれています。明細には出てきませんが、代理店を外せば無くなります。

2つ目。自社の数字が良いのか悪いのか、判断しにくくなる

代理店を通していると、自社以外の動きが入ってきます。同じ業界で何が起きているか、媒体で何が変わりつつあるか。日常の会話に混ざってくるものです。

外の動きが入ってこなくなると、獲得単価が上がったときに、自社の運用の問題なのか市場全体で上がったのかを切り分けられません。

制度の面でも同じことが言えます。Google Partners の要件には、過去90日間の子アカウント全体の広告費が10,000米ドルを超えていることが入っています。担当者の50%以上が認定資格を持っていることなども条件です。複数の広告主のアカウントを束ねている事業者を前提にした制度です。

広告主がこの制度に入る必要はありません。ただ、代理店が複数社を横断して見ている状態は、媒体の制度によっても作られています。

3つ目。数字になる前の話が、入ってこなくなる

ある業種で問い合わせの質が変わってきた、といった話が代理店の担当者から聞こえてくることがあります。資料には残りませんが、判断の速さに効きます。

4つ目。設定ミスを止める人が、いなくなる

いちばん見落とされやすいのがこれです。

代理店にいる運用担当者は、間違いが起きないように止める役をしていることがあります。私も止めてもらいました。広告の設定ミスは、注意していても起きます。人がやる作業である以上、必ず起きるものだと考えたほうがいい。

インハウス化すると、この確認の役も自社に移ります。

気をつけたいのは、人を1人置けば済む話ではないことです。必要なのは、間違いに気づける人です。広告の設定を触ったことがない人が画面を見ても、おかしいかどうかは分かりません。

インハウス化で最初に決めるのは、誰が確認するかです。ツールの選定でも、担当者の任命でもありません。

この章のまとめ

  • 手数料に出てこない問題が4つある。困ったときの連絡先、競合と市場の動き、現場の声、設定ミスを止める人
  • 代理店が複数社を横断して見ている状態は、媒体の制度によっても作られている
  • 設定ミスは必ず起きる。だからインハウス化で最初に決めるのは「誰が確認するか」

「AIがあるから広告運用できる」は、半分しか合っていない

冒頭で、やれる範囲が広がったと書きました。

広がったのは事実です。ただ、仕事で使える状態にするには2つ必要でした。その分野の経験者が中身を詰めることと、自社の一次情報です。

経験者がいないと、出てくるものが一般論になる

専門家が中身を調整しないと、返ってくるのは一般的な手順書です。広告運用で使いたいなら、広告運用の経験がある人が要ります。何を判断材料にするか、どの数字を先に見るか、どこで止めるか。この指定ができる人です。

自社の一次情報も要ります。自社の顧客が何と言っているか、どの経路から成約したか、過去に何を試して何が外れたか。一次情報が無いまま使うと、他社と同じ答えが出てきます。同じ道具を使っているのだから当然です。

インハウス化の記事が書く「人材の確保」とは、別の話

どの記事も「運用スキルを持つ人材の確保が必要」と書いています。これは正しい。

ただ、必要な人材の条件が変わりつつあることは、あまり書かれていません。道具が作業を引き受けるようになったぶん、人に残るのは判断のほうです。設定を触れる人ではなく、出てきたものが妥当かどうかを判断できる人。この2つは、必要な経験が違います。

「AIがあるから自社でもできる」は半分合っています。残り半分は、経験者と一次情報をどこから持ってくるかという問題です。

この章のまとめ

  • 道具で広がったのは作業の範囲。判断の部分は残る
  • 仕事で使える状態にするには、経験者による調整と、自社の一次情報の2つが要る
  • どちらも無いまま始めると、出てくるものは他社と同じ一般論になる

インハウス化を言い出したのは、誰か

インハウス化の方針は、実行する担当者ではなく、その上から降りてくることがあります。

私が見てきた範囲でも、言い出した人が引き換えに何を失うかを把握していないまま話が始まることはありました。コスト削減も、ノウハウを社内に残すことも、目的としては正しい。ただ、上に書いた4つを承知したうえでの判断なのかどうかは別の問題です。

実行を任されたなら、最初にやることは体制づくりでもツール選定でもありません。言い出した人に、なぜやるのかを確かめに行くことです。

目的が手数料の削減なら、内訳の確認から始まります。ノウハウの蓄積なら、優先順位は変わります。「他社もやっているらしい」と聞いてきただけなら、そこから議論をやり直したほうが早い。

確かめに行くのは、反対するためではありません。引き換えに失うものを、決めた人と共有するためです。

広告運用を、全部いちどに移さない

ここまで読んで、インハウス化に反対しているように見えたかもしれません。そうではありません。

書いているのは、全部をいちどに移さないことです。

判断の軸には、手数料に出てこない4つをそのまま使えます。このうち、いま手放しても困らないものはどれか。それを一つずつ見ていきます。

確認の役を担える人が社内にいるなら、日々の運用は移せるかもしれません。その人がいないなら、運用体制より先に確認の体制から作る必要があります。競合の動きが事業計画に効いている会社なら、そこだけ代理店に残す形もあります。

全部か、ゼロか、ではありません。一部だけを自社に置く形は、実際によく機能します。

移した後に戻す判断もあります。内製化を進めて自走できる状態になった会社が、事業の拡大で手が足りなくなって、いったん代理店に戻した例もあります。その後、また社内に戻しています。行ったり来たりして構いません。一度決めたら変えられない、という種類の判断ではないからです。

広告運用のインハウス化は、手数料が浮く金額では決められません。そこに出てこない問題が4つ残るからです。

そして切り替えの日には、支払いと計測が止まります。ここは公式の説明があるので、事前に確かめられます。

まず確かめるとよいのは、次の3つです。

  1. いま代理店に払っている金額の内訳(運用の対価と実費が分かれているか)
  2. 支払い元が、どちらの管理アカウントになっているか
  3. 広告の設定を確認できる人が、社内にいるか

このうちひとつでも答えが出ないなら、判断の材料がまだ揃っていません。

広告の成果をどう測るかは、CPAが下がったのに売上が増えない理由にも書きました。獲得の単価と事業の売上がずれる話です。外部に頼む場合の費用の考え方は、CMO代行の費用相場と内訳にまとめています。

外部に何を残すかで迷うなら、内製化と外注のコスト比較に判断の材料をまとめています。

よくある質問

Q. 代理店に「インハウス化を検討している」と伝えると、関係が悪くなりませんか。

伝え方によります。内訳を確かめたいという相談の形であれば、普通の会話として進みます。切り替えの手続き(支払い元の変更やアカウントの権限)は代理店側の協力が要るので、黙って進めるほうが事故につながります。

Q. 上司が「他社もやっているから」と言って聞きません。

他社の事例は、その会社の体制とセットでしか意味を持ちません。話を戻す材料になるのは、この記事の4つのうち「うちはどれを手放せるか」という問いです。やる/やらないではなく、どこまでやるかの話に変えると議論が進みます。

それでも動かない場合は、支払い元の切り替えに社内で何日かかるかを調べて持っていくと、話が現実に戻ります。

Q. 代理店が内訳を出さないまま、契約の更新時期が来てしまいました。

更新を止める必要はありません。次の1か月ぶんだけ、内訳の提示を条件にする形が取れます。それも難しい場合は、自社の広告アカウントで支払い元がどちらになっているかだけ先に確認しておいてください。切り替えを判断する日に、いちばん時間がかかるのがそこです。

Q. 社内に広告運用の経験者がいません。採用すれば解決しますか。

採用は選択肢のひとつですが、順番が逆になりがちです。先に決めることは「誰が確認するか」で、これは運用そのものとは別の役です。運用できる人材を1人採っても、その人の設定を誰も検算できないなら、確認の役は空いたままになります。体制の穴は、人数では埋まりません。

参考にした資料

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この記事を書いた人

たけまるマーケティングディレクター

事業会社で17年、マーケティングの現場と決裁の場にいました。広告・コンテンツ・データのどれか一つではなく、売り方全体を決める側から見た話を書きます。